福田正博氏「(イニエスタの)底知れないすばらしさに畏敬の念さえ抱いている」

福田正博氏がイニエスタの凄さや神戸の選手がイニエスタから吸収できることなどを記事で言及しています。

紹介しているのは記事の一部ですので、全文は引用元のwebスポルティーバをご参照ください。

福田正博フォーメーション進化論
あらためてイニエスタのすごさに驚いている。バルセロナ時代のイニエスタのプレーを何百回と見てきたが、実際にJリーグで見せる、底知れないすばらしさに畏敬の念さえ抱いている。

 Jリーグ初得点となったジュビロ磐田戦で見せたトラップからのシュートも、2点目となったサンフレッチェ広島戦での豪快なミドルシュートもすばらしいものだったが、私がさらに驚かされたのは横浜F・マリノス戦で見せたロングシュートだった。

 バルセロナ時代のイニエスタは、ロングシュートどころか、ペナルティーエリア内でもシュートを打たずに、パスを選ぶシーンがよくあった。「なぜ打たないんだ?」と思うこともあったが、バルサにはメッシやスアレスという圧倒的な数のゴールを量産する超一流アタッカーがいたため、より高い確率でシュートが決まるプレーを選んでいただけだろう。

 そのイメージが強かっただけに、ロングシュートには驚かされたが、チームを移籍して、一緒にやるメンバーが変われば、アプローチも変わるということだ。勝つ確率をもっとも高めるために、バルサ時代は無理してシュートを狙う必要はなかったが、ヴィッセル神戸では自分がやるべきプレーの選択の幅が広がっていると感じているはずだ。

 サッカーは、得点を決めることが最大にして最終目的のスポーツであるため、プレーを選択するときに最優先するのはシュートだ。自分がシュートしても決まる確率が低ければ、より得点の確率が高まるプレーを選択していく。これが原理原則にあるのだが、イニエスタのロングシュートも、その原理原則に従ってプレーを選択したということになる。

 私が現役時代に一緒にプレーしたチキ・ベギリスタインも同じだった。チキはバルサやスペイン代表で活躍し、1997年から99年に浦和レッズでプレー。引退後はバルサでディレクター職をつとめ、現在はマンチェスター・シティのフットボールディレクターになっている。その彼が、浦和時代にトレーニングで見せた姿勢に、一緒に練習していた私は目から鱗が落ちる思いだった。

 パスをつなぎなからポゼッションしていくトレーニングをしていた時、ミニゲーム形式で味方にパスをする局面で、チキはゴールが空いた瞬間、パスを出す素振りをして、アウトサイドキックでシュートを打ってゴールを決めた。

ポゼッションの練習でそんなことをしたら、「練習にならないじゃないか」とコーチに言われるとこちらは考えていたから、「なにやっているんだ」と思っていたが、チキの考えは違った。「パスをつないでポゼッションするのは、ゴールを奪うためであって、得点できるチャンスがあるのにシュートしないのはおかしい」。それが、欧州のトップで生きてきた彼にとって当たり前のことだったのだ。

 サッカーはゴールを奪うことが目的のスポーツで、得点を奪う確率を少しでも上げるために、フォーメーションを考えたり、ポゼッションなどのチーム戦術やスタイルがあるが、それらはすべて、ゴールという目的のための手段に過ぎない。そのことを、チキは練習や試合のプレーで示していた。イニエスタが加入したヴィッセル神戸の選手たちも、私が現役時代にチキとプレーして感じたことと似たようなことを感じているのではないかと思う。

 イニエスタもチキと同じで、ゴールを奪うことを最優先にプレーしているし、パスをした方がその確率が高まるからそうしている。自分よりもゴールの近くに味方がいたり、スペースがあれば、そこを使う。中盤で自分の態勢が悪ければ、味方とシンプルにパス交換をして、その間に自分の態勢を整える。シンプルにプレーしながら、的確に状況を判断している。

 そうした判断ができるのは、イニエスタが頻繁に首を振り、体の向きをこまめに微調整しながら、ピッチ上の情報を収集して、すばやく最適な判断で次のプレーを選択しているからだ。もちろん、ただ単に首を振るだけではダメで、イニエスタのように、収集した情報を分析する能力の高さと、判断の正しさ、それを迅速に実行する正確な技術がなければ、何の意味もない。

 そのイニエスタが加わったことで、ヴィッセル神戸の選手たちは自分がうまくなったと感じているのではないだろうか。イニエスタに限らず、ボールを失わない選手がチームにいると、相手の守備がそこに集中し、ボールを保持して時間をつくってくれるので、周りはパスを受けるときにフリーになれるし、考えて判断する時間に余裕が生まれる。そのためミスが減って、自信が持てるようになり、より積極的なプレーができるという好循環が生まれる。

 しかも、ピッチ上で常に高いテンションのルーカス・ポドルスキと違って、イニエスタは冷静で穏やかなので、味方が遠慮するようなところもない。ミスをしても、イニエスタが「OK、OK」と手を叩いてくれたら、気持ちを切り替えて、次のチャンスにトライする気持ちにもなれる。そういう雰囲気をつくり出しているのも、イニエスタのすごさだ。

 ただし、イニエスタがその能力を十全に発揮しているかというと、まだまだだろう。たとえば、FWに出す縦パスにしても、バルサ時代は動いているFWの足元に出していたが、神戸ではスペースに出している。スルーパスを出すタイミングも、相手に合わせようとしているケースがある。

 バルサで、スアレスやメッシに出していたのと同じ感覚でパスを出しても、対応できる選手がいないので、周囲に合わせているのだろう。だが、神戸の日本人FWは、せっかくイニエスタと一緒にプレーしているのだから、パスが出てくるまで何度も動き直して、パスを受け続けて、イニエスタのタイミングに合わせていってほしい。

続き:webスポルティーバ


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